8.LANの活用と問題点
8-1.ネットワークとファイリング (旧「ファイリングの部屋」アーカイブ)

ファイリングの部屋
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これまで hi-ho.ne.jp で公開していた「ファイリングの部屋」を、この新しいドメイン(filingroom..jp)にもコピーしました。不要と思われるページは削除していますが、内容はそのままです。
従来のアドレスにも、当面は残しておきますが、できるだけこちらを利用していただければ幸いです。

 

ネットワークの普及で、情報の伝達手段が、紙の書類を送付することから、ネットワークを利用したものほぼ完全といってもいいくらいに変化しました。ここでは、ネットワークの利用そのものではなく、ファイリングと関係するものに絞っています。

ネットワークの利用では、WEBの検索(情報の入手)、電子メール、 電子掲示板(電子会議室)が主なものでしたが、最近はこれに加えて電子商取引(会社間だけでなく、個人でもオンライン発注やオンラインでの銀行振り込みなどを含む)が定着しました。
組織内での利用に限ると、これらに加えて社内データベースのほかにグループウェアとしての活用を加えることができます。

減っていない紙の書類
  従来、紙の書類を郵送したり、FAXで送信していたものが、電子メールなどに置き換えられることで紙の書類は大幅に削減されているように見えます。しかし、削減された書類のほとんどは一過性のもので、もともと内容を確認すれば、捨てられるものです。保存・保管が必要なものについては、これまでどおり紙の書類をやり取りしているのではないでしょうか。あるいは、電子メールで送られてきたものを印刷して保存することで、紙の書類はほとんど減ってはいないでしょう。しかし、紙で保存できている場合は、まだましかもしれません。
   
安易なメールの削除
 

電子メールを受け取り管理しているメールサーバーは、メールを保存するためのディスク容量の関係から、通常はユーザーに対し、ディスク容量を制限しています。制限していない場合でも、一定容量を越えた場合は警告を出すことで、メールを削除するように促しています。
データ保存に対してそれほど意識の無い人は、とりあえず必要の無くなったメールを削除することで対応してしまいます。後で必要となったときに、削除してしまったことに気づいても、手遅れとなっています。特にメールを受信した側は、それほど保存に対して必要性を感じないためか、安易に削除する傾向にあります。

送信した電子メールや受け取った電子メールを何らかの方法で保存しようとしても、通常は利用しているメールソフトの管理の下で、ハードディスクに保存する以外には、あまり適当な方法はありません。これらメールが個人的に管理してもよいものであれば、それほど問題はありませんが、これが、組織として管理保管すべきメールであった場合には、ほとんど最適な保存方法は無いと言っても過言ではないでしょう。

米国ではeディスカバリー制度ができ、訴訟に関係するデータをすべて提示するように求められるようになりました。この関連するデータには、紙の書類だけではなく、電子メールも含まれます。個人で管理している電子メールから、異動した人だけでなく、退職や転職した人まですべての関連した人全員が対象となり、その訴訟に関連するものをすべて取り出すことは不可能です。アメリカと直接関係していなくても、製造したものが米国で売られていたりするなど、何らかの関係がある場合には、訴訟に巻き込まれる可能性があります。
すべての関連するメールを提出したつもりでも、相手先から受け取ったはずのメールや送ったはずのメールが含まれていないと指摘されると、意図的に隠ぺいしようとしたと判断され、懲罰的な制裁を受ける可能性があります。

また、法人税法の関係では、国税庁は取引に関するメールを残すように指示しているといわれていますが、この場合国税関連書類の保存期間は7年にもおよびますので、電子メールの取り扱いについては注意が必要です。

   
難しい発信したデータの保存
 

一般の人に向ける情報は、自社のホームページで発信するもののほかに、Blog、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアで発信するものもあります。
自社のホームページであればその保存は容易ですか、社外のシステムであるソーシャルメディアの場合は、簡単にはいきません。

自社のホームページであれば、掲載した時にバックアップを取れば、すべてのデータを保存することは可能ですし、通常はシステム関係の部門が担当して行います。これに対し、ソーシャルメディアの場合は、システムの管理は全く別のところで行われているため、定期的にバックアップを行い管理していく部署と体制の整備が必要です。

   
検索したホームページ
 

ネットワークの利用で、最も普及しているのは、インターネットの検索です。ネットワークが普及していなかった時は、何か情報を探そうとしたとき、まず参考図書を探しに図書館に行ったり、商品に関することは、メーカーや販売店からパンフレットや技術資料を取り寄せたりする必要がありました。今は、ネットワークを検索するだけで、かなりの資料を入手することができるようになりました。

このようにホームページで検索して見つけた情報は、どのようにすればいいのでしょうか。特に保存はせず、再度必要となったときに、また検索することも一つの方法です。しかし、印刷された情報とは異なり、ホームページの内容は頻繁に更新されます。あったはずのページが無くなった、内容が変更され肝心のデータが見当たらない、などのトラブルはよくあることで、本当に必要なものは、やはりダウンロードして保存しておく必要があります。
単純にダウンロードしただけでは、そこに貼り込んであるイメージの取り扱いには注意が必要です。少々面倒ですが、Acrobatファイルに変換した上で保存することも考慮したほうがよさそうです。

   
ネットワーク上の情報
 

上の項とは異なり、ソーシャルメディアへの対応は、全く違った観点から見る必要があります。
Blog、Facebook やtwitterは、誰でも情報が簡単に発信できるようになっています。このため、製品や企業などに対して批判的な書き込みが、いつどこで発生するか捉えにくい状況となっています。このような書き込みを、自動的に検索するためのシステムも販売されていますが、どの企業でも手軽に導入できるといったものでもなく、誰かから指摘されて初めて気が付くということになりそうです。

Facebookの場合は、友達の関係から情報が拡散しやすく、膨大な情報が対象となるため、ビッグデータとしての新たな対応が模索されています。

   
クラウドの利用
 

クラウドという言葉は、2010年ころに大ブームとなり、テレビのCMなどでも盛んに使われました。しかし、その実態は雲をつかむように、定義も明確ではないままに、何でもできるような感覚でとらえられたのではないでしょうか。
しかし、さまざまなデータをクラウド上に置き、いろいろなソフトウェアのサービスを利用することは簡単になり、個人でも無料のサービスが使えるようになりました。DropboxやSkyDriveなどのファイルサーバーでは、数ギガバイト程度であれば無料で利用できます。

メリットは、いつでもどこからでも利用できるだけでなく、他の人とファイル共有も簡単にできることでしょうか。
企業などで利用する場合は、手軽に導入でき、システムのメンテナンスはサービス会社に任せておけば、ほとんど任せきりにできることが魅力的です。
しかし、クラウドを利用するにあたっての注意点や考えておく必要があるものもあります。
それらを挙げてみると次のようなものがあります。

  ・インターネット経由でデータの送受信を行うことによる盗聴の可能性、不法アクセス
   

これは組織内に構築されたプライベート・クラウドでは関係がありませんが、一般のサービス会社によるパブリッククラウドを利用する場合には、必ずついてまわることです。当然ながら暗号化通信の利用が原則となります。

  ・サービス提供会社との信頼関係
    大切なデータを預けるわけですから、秘密保持契約の締結は必須ですが、サービスを受ける側から見ると、サーバーのメンテナンスなど、直接データを扱うことのできる人が、どのようなスキルを持っていたり、データを大切に取り扱ってくれるかは把握できません。
また、サービスの利用を中止する場合、データの消去を依頼しますが、サーバー内のデータは容易に消去できるでしょうが、バックアップデータの場合は、他の会社のデータと混在している可能性もあり、簡単にはいかないケースもあります。
その他、サービス提供会社がサービスの提供をやめてしまうということもあります。
  ・クラウドサービスの品質
   

クラウドサービスの宣伝に「クラウドだから安心。」というのがありました。しかし、2012年6月に発生したファーストサーバー社が、過失によりデータを消去してしまう事故が発生しました。この会社では、データのバックアップは顧客の責任と契約書には書いていたとのことですが、一方で顧客は何も作業しなくてもいいと宣伝していたため、データが完全に消滅した企業も多いとのことです。更に悪いことには、復旧作業中に、他社のデータが見えた(逆に言えば自社のデータが他社に読まれ、機密漏えいが発生した可能性がある)ことです。
データの消滅ではなく、突然にサービスが停止することもあります。これも2012年6月ですが、アマゾンのクラウドが停電の影響で、数時間停止しています。通常は停電の場合、蓄電池、自家発電装置を持っていますが、自家発電への切り替え、さららはバックアップセンターの利用などで、サービス停止はあり得ないはずなのですが、実際には発生してしまいました。

  ・サーバーの立地
    費用を安くするために海外にサーバーを海外に置いている場合があります。この場合、サーバーには海外の法律が適用されるため、日本とは異なった状況が起こりえます。官庁などで、データを国外に持ち出すことが禁じられている場合には、このようなサーバを利用することはできません。
  ・ソフトウェアへの囲い込み
    サービス提供会社の提供するソフトは、カスタマイズすることはできませんので、できる範囲で利用していくことになります。この場合、そのソフトに合わせて、業務の手順などを変更していた場合などでは、他のソフトへの乗り換えが非常に難しくなり、ベンダーに囲い込まれてしまう危険性があります。
   

 

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| 12.リスク管理 | 13.ファイリングに関する動き | 14.付録 | 15.編集雑記 |


Updated on 2012/09/17