13.ファイリングに関する動き
13-5.電子帳簿保存法
(旧「ファイリングの部屋」アーカイブ)
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これまで hi-ho.ne.jp で公開していた「ファイリングの部屋」を、この新しいドメイン(filingroom..jp)にもコピーしました。不要と思われるページは削除していますが、内容はそのままです。
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98年に成立した「電子帳簿保存法」についてファイリングの観点から見ます。電子データで保存するためには、細かく要件が規定されていますが、それらについては他のホームページなどを参照してください。
 
電子帳簿保存法とは
 

企業活動を行う上で作成する帳簿類は、これまで紙の状態で7年間保存することが義務付けられていました。この帳簿書類のは相当な量となるため、保管のために大きなコストを負担せざるを得なかったのです。書類の量を減らすために、これまでは7年間のうち、後の5年間はマイクロフィルムやCOM(Computer Output Microfilm)での保管が認められていただけですが、電子データとして保存することも許されるようになりました。
さらにe-文書法に対応して、紙の書類をスキャニングにより電子データ化して保存することも認められるようになりました。

しかし、すべての帳簿や書類は該当せず、特に重要な文書であるとして引き続き紙により保存を求めているものもあります。

   
これまでの経緯
 
94年 3月 商法で規定されている商業帳簿等を電磁的記録によって保存することは可能であると法務省が発表
97年 3月 「帳簿書類の保存等の在り方について」の報告書 「帳簿書類の保存等の在り方に関する研究会」
98年 3月 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」成立(略称「電子帳簿保存法」)
  電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等に関する法律施行規則」公布
98年 5月

電子帳簿保存法取扱通達の制定について」、「電子帳簿保存法関係申請書等の様式の制定について」を通達 国税庁

98年 7月 電子帳簿保存法 施行
04年11月 e-文書法 成立
04年12月 電子帳簿保存法 改正(施行は05年 4月 1日)
05年 1月 「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令」を公布 財務省
05年 1月 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第3条第5項第四号ニに規定する国税庁長官が定めるところを定める件」を告示 国税庁
05年 1月 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第3条第6項に規定する国税庁長官が定める書類を定める件」を告示 国税庁
   

ファイリングから見た電子帳簿保存法

 

これまで帳簿書類の一部がマイクロフィルムでの保管が認められていただけで、ほとんどが紙の状態で保存されていました。これが電子保存されるようになることで、企業での書類保存にかかる負担は大幅に軽減されました。
日本情報処理開発協会の推計によると、上場企業2138社全体の国税関係帳簿書類のスペース賃貸、出力などの保存コストは812億円にものぼり、1社あたり平均約3800万円にもなります。各企業の帳簿関連コストに国税関係のものが占める割合は20パーセント未満と言われ、帳票が紙であるために人が関わるコストは、その20から30倍ともいわれています。 代表的な例では、大手スーバーでは年間に発生する帳票は6000万枚にのぼり、5年間保存してマイクロフィルムかしても3000坪の保管スペースが必要とされ、15億円以上の費用がかかっているそうです。
書類の保管場所の削減、データの検索が容易となるなどの直接のメリットのほか、これをきっかけに社内データベースを整理統合して、各種データを有効活用するといった波及効果も生まれています。

   

他業界への波及効果

 

帳簿書類を紙の状態で保存する必要がなくなったことから、いろいろなところに波及しています。

プリンタ用紙  コンピュータ用のプリンタ用紙がほとんど不要となる
倉庫業     帳簿書類の保管を代行していたものが不要となる
運送業     センターで印刷した書類をトラックで配送していたが不要となる
マイクロフィルム業 改めてマイクロ化をする必要がなくなる
コンピュータ関係 電子帳簿保存法対応のソフト、ハードの売上が増加

   
電子帳簿保存法の承認状況
 

国税庁が発表している電子帳簿保存法関係の統計は、平成16年度までは申請状況を発表していました。
(国税庁:「電子帳簿保存法に係る申請状況について」平成11年10月平成13年11月平成14年10月平成16年11月

ところが、平成17年度からは承認状況についての発表に変わりました。このため、ここでも承認状況のグラフを示します。
(国税庁:「電子帳簿保存法に係る電磁的記録による保存等の承認状況について」平成17年11月平成18年11月平成20年10月平成21年10月平成22年10月


(注)年は事務年度を表しており、7月1日から翌年6月30日まで。

国税庁の発表が、申請状況から承認状況となったため、データが重なっている時点での申請と承認の数値を比較できます。

   

e-文書法

  2004年2月6日に、IT戦略本部で、「e-Japan戦略U加速化パッケージ」を発表し、この中のeー文書イニシアティブで、『財務関係書類、税務関係書類等の文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、文書・帳票の内容、性格に応じた真実性・可視性等を確保しつつ、原則としてこれらの文書・帳票の電子保存が可能となるようにすることを、統一的な法律(通称「e-文書法」)の制定等により行うこととする。このため、電子保存の容認の要件、対象範囲等について早急にとりまとめ、2004年6月頃を目途にIT戦略本部に報告を行い、法案を早期に国会に提出する。』としています。
2004年11月に「e-文書法」が国会で可決され、2005年4月1日より施行されることとなりました。この「e-文書法」を受けて、2004年12月1日に「電子帳簿保存法」が改正され、さらに財務省令、国税庁告示などが出され、スキャニングによる電子化が容認されました。
(「e-文書法」については、「e-文書イニシアティブ」のページを参照してくだい。)
   
スキャニングによる電子化の容認
  国税関係帳簿書類のうち、帳簿、決算関係書類、契約書及び領収書については、特に重要な文書であるとして引き続き紙により保存を求め、それ以外のすべての書類については一定の要件の下、紙の保存に代えてスキャナ保存することができるようになりました。但し、契約書や領収書でも、記載された金額が3万円未満のものについては、スキャナ保存することができます。
   
スキャニングによる電子保存の要件
 
入力は、書類の作成または受領後速やかに行うこと。
スキャニングはカラー(RGB256階調以上)、200dpi以上とすること。
入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に、入力者または監督者の電子署名を行うこと。
電子署名が行われている記録事項に、タイムスタンプを付すること。
記録事項について訂正または削除を行った場合には、これらの事実および内容を確認することができること。
電磁的記録の記録事項と、当該国税関係書類に関連する国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと。
保存をする場所に、電子計算機、プログラム、カラーディスプレイ(約14インチ以上)、カラープリンタ、操作説明書を備え付けること。
カラーディスプレイの画面および書面に、規定の状態(整然とした形式、書類と同程度の明瞭性、拡大・縮小による出力、JIS の4ポイント文字の認識等)で速やかに出力できること。
   
スキャニングによる電子保存の状況
 

上に書いたように、スキャニングによる電子保存は容認されていますが、その要件についての判断があいまいであったため、ほとんど進んでいなかったようです。日本画像情報マネジメント協会(JIIMA)によると、スキャニングによる電子保存が認められてから1年後でも、税務署からイメージ保存認められた企業は皆無であり、2年後でも都市銀行1行があるのみで、約100社以上の企業が申請を取り下げていたとのことです。(月間「IM」 2010年1月号)
このため、経団連から「2009年度日本経団連規制改革要望」(2009年6月16日付)が出されました。この中の「情報・通信、放送分野」で、『電子帳 票システムを利用する場合に機能としてどこまでできていればよいのかが明確 でないため申請できない状況が続いている(どのような対応をすれば「電子帳 票システム」利用が承認されるのか判断できない状態)。』と、して、ガイドラインを示すように要求しました。
このような背景を受け、国税庁は2009年11月26日に、「電子帳簿保存法の申請事例(電子帳票システムを利用している場合の申請事例)及びQ&A」をホームページで公表しました。

   

 

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Updated on 2013/09/28