7.電子ファイルとファイリング
7-5.電子ファイルは一つの手段 (旧「ファイリングの部屋」アーカイブ)

ファイリングの部屋
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これまで hi-ho.ne.jp で公開していた「ファイリングの部屋」を、この新しいドメイン(filingroom..jp)にもコピーしました。不要と思われるページは削除していますが、内容はそのままです。
従来のアドレスにも、当面は残しておきますが、できるだけこちらを利用していただければ幸いです。

 

電子ファイリングが便利だということで、書類を電子化しようとする動きが高まっています。
電子ファイル化を実行するには、いろいろなところで使われているAcrobatを使えば問題はなさそうだし、比較的簡単に使えることからこれを採用し、PDFファイルとしてCD−Rに書き込んで終了したと思っている人が多いようです。

最も多い勘違いは、電子ファイル化することそのものを目的としていることではないでしょうか。
電子ファイリングそのそものは目的ではなく、書類を整理するときの一手段であり、当然ですが、問題を解決する他の手段は一つとは限りません。
(官庁の一部では、目的を十分に決めることなく安易に電子ファイリングを予算化してしまい、業者を呼んでいい提案をしてくれたところに仕事を出す、などのようなこともあったようです。これは電子ファイリングそのものが目的となっていますが、いい仕事の仕方とはいえません。)

 

目的と手段をはっきりさせていなかった一例をあげてみます。(実際にあった話です。)

住所録をACCESSで作成し、はがきの宛名印刷をしたい人がACCESSに詳しい人にその方法を聞いていました。(1).ACCESSで宛名印刷ができるのか。 (2).ACCESSでのデータベース作成方法。 (3).宛名印刷をするための印刷方法。
この質問についてはわかりやすい答えをもらったため、教えてもらった順番どおりに手順をふんでデータベースを作成していました。

一見なんでもないようなことですが、この人は中途半端なパソコンの知識を持っていたために、もっともらしい質問をしてしまい、無駄な作業をした例です。
この人の真の目的は、年賀状の宛名印刷をしたい。ついでに住所録をデータベース化することで、来年以降もそれを利用したいというものでした。これだけでの目的であれば、日常使っているEXCELやWORDを使って宛名印刷するだけで十分なだけでなく、必要とする時間も大幅に節約できたはずです。

住所録 → データベース化 → ACCESS の順に考え、それに従って順に質問をしてしまいました。聞かれたほうは親切に答えてはいますが、少しピントが外れてしまっています。あたかもACCESSのデータベースを勉強するための素材として住所録をとりあげ、ついでに宛名印刷までする、といった目的となっています。本当は何をしたかったのか(住所録を作成し、宛名印刷をしたい)を明確にして、その手段であるACCESSについては触れなかったほうがよりよい結果が得られたでしょう。

真の目的を掴んだことで、大きな成果をあげた例(雑誌に掲載されていた事例です)

ある化学繊維メーカーは、魚網用途ではかなりの実績を持っていましたが、養殖網の用途ではほとんど実績はありませんでした。市場でニーズを調査したところ、養殖網では、より高い強度が必要であることがわかりました。水産業従事者の減少に伴い、手間のかかる養殖網のメンテナンスに手がまわらずに、貝がたくさん網に付着するようになっており、その貝の重さに耐える強度が必要で、漁網用の製品では網が切れる可能性が高いというものでした。
この解決策として、網の強度を上げるのではなく、光触媒を練りこんだ改良製品を開発しました。光触媒によって、貝の餌である藻が付かなくすることで、貝の付着を減らす効果を狙ったものです。結果として、従来品の倍の価格でもあるにもかかわらず、これを採用する養殖業者が続出したとのことです。
貝がつかなくなったことで、網の引き上げ作業が楽になるだけでなく、その作業に使用していた重機類も小型のものですむといったメリットも出てきました。 単純に網の強度を上げただけで市場に参入しようとすると、価格競争をすることになり、たとえ市場に参入できてもほとんど利益を得ることができなかったでしょう。

この例では、藻が付着することが真の原因(藻が付着しないのが真の目的)で、これから派生する不具合が、貝が付着するというものです。この結果網が切れるといった不具合が生じ、網の強度を強くするといった対応策が考えられます。客先でニーズを聞き出す場合、普通はこの問題点を指摘されるだけです。解決策としては、上図のどの部分を断ち切ってもよく、根本の原因を防ぐことが最も効果が上がります。

電子ファイリングでもこのような例があるようです。
書類の電子化ならACROBATの利用との単純な発想から、どのような書類もPDF化することを信じてしまっている人が多いようです。しかし、電子化の目的に応じて、いくつかある手段のうちで最適なものを選ぶことが必要です。
(ファイリングについて相談を受けた人は、表面的な希望ではなく、本当にしたいことは何かをつかむことで、より的確なアドバイスを行うことができ、お互いにとって好ましい結果が得られます。)

大量のデータを配布したい(不特定多数に対する配布で内容を変更して欲しくない場合)
 

PDFファイルとしてセキュリティを設定することで、表示することはできても変更はできないようにします。表示用のソフトは無償で配布されており、すでに十分に普及していると考えても大丈夫でしょう。
データの配布方法としては、CD−ROM化して配布するだけでなく、インターネットを利用した配布も考えられます。
作成したときと基本的にレイアウトは同じとなるはずですが、時にレイアウトが崩れることもあるので注意が必要です。(「電子ファイリングの保存方法」を参照)

   
大量のデータを配布したい(不特定多数に対する配布であるが、再利用も考慮している場合)
  PDFファイルでは、そのデータを再利用することはほとんど不可能です。再利用を考えると、そのデータを作成したオリジナルのファイル(たとえばMS−WORDのファイル)を配布することとなりますが、ソフトを持っていない人は見ることも難しくなります。対応策として、表示用のソフトを同時に配布したり、PDFファイルも含めて配布するなどの工夫が必要です。
オリジナルデータとの区別が大切な場合は、書き換えが不可能なCD−ROMとして配布すれば、誤った消去や書き換えを防ぐことができます。
特定の人に対する配布であれば、相手の環境さえ把握していれば十分なため、細かな配慮は必要ないため、気軽に行えます。
   
倉庫に山積となっている大量の書類をなんとかしたい(探すのに苦労している)
  この場合は電子化より、まず紙の書類の整理整頓を行うべきです。整理の段階で、分類・仕分けを行いながら、不要となった書類の廃棄を同時に進めると、書類の量がかなり減るために、とりあえずの目的は達成する可能性もあります。
   
倉庫にある古い書類がボロボロとなってきた
  対応策としてコピーを取ることも考えられますが、電子化することを優先すべきです。書類をスキャニングして電子化しますが、ケースによってはマイクロフィルムによる撮影が優先することも考えられます。
   
将来はデータベース化して、過去の資料を有効活用できるようにしたい
 

全文検索をしたいのか、キーワードによる検索をしたいのかによっても違ってきますが、単にキーワード検索でよいなら、書類をスキャニングして画像データ(使いやすければどのような形式でもOK)とし、これにキーワードをつけた画像データベースを作成することになります。
将来はOCRなどを用いてテキスト化する予定があるなら、書類をスキャニングして画像データベースとするのは同じですが、300dpi以上の精度で取り込み、画像データはTIFF形式として保存するべきです。

   
設計図面を修正して使いたい
  紙でしか残っていない設計図面は、スキャニングして画像イメージとしてCADソフトに取り込み、再利用します。取り込んだ図面のイメージデータから、自動的にベクトルかするソフトもありますが、現在のところはそれほど精度はありませんので、必要な部分だけのベクトル化にとどめるべきでしょう。CADソフトのほとんどはイメージデータを1つのレイヤーとして取り扱うことができますので、これに適した形式であれば何でもいいわけですが、将来のことを考えるとTIFF形式での保存が最適でしょう。
   
官庁が保存している設計図面の電子化
  官庁の場合は一般の企業とは異なり、国土交通省(旧建設省)が推進している建設CALS/ECを踏まえた対応をする必要があります。この場合は、単純に図面をスキャニングするだけでなく、データ整理にXML文書の作成技術が必要となる場合もあります。

この他にもいろいろなケースが考えられ、目的に応じた対応が必要です。

 

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Updated on 2013/09/28